国立天文台ALMA東アジア地域センターの研究グループは,銀河系の3次元立体地図を作るプロジェクトVERAにおける電波干渉計の手法を用いて,大質量星形成領域 IRAS 22555+6213 の水メーザー観測を行ない,年周視差や天体の運動速度を計測した(ニュースリリース)。
銀河系にはいくつかの渦巻き状の腕がある。IRAS 22555+6213 は,そのうちのひとつ “ペルセウス腕”にある大質量星形成領域。
研究チームは2010年5月~2013年1月にかけて,VERAを用いた複数回の観測を行なった。その結果,年周視差は 0.314±0.070 mas,地球からの距離は約 3.18 kpc(=10367光年)と算出された。また,この天体の銀河回転速度を精密に測った結果,平均的な銀河回転速度よりも毎秒30kmほど遅いことがわかった。
この現象は過去にも他の天体で示唆されていたものの,今回の観測結果によって”ペルセウス腕”全体が銀河回転より遅れていることが明確になった。なぜ遅れているのか原因は不明だが,「ペルセウス腕」の重力に起因するなどの説が考えられているという。
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