東北大学の研究グループは,山形大学,及びトプコン アイケア・カンパニーと協力して,視神経が眼球に入る篩状板(しじょうばん)と呼ばれる部分の厚さの測定に成功し,緑内障の患者では健常者よりも篩状板が薄くなっていることを明らかにした(ニュースリリース)。
緑内障は40歳以上の約5%が罹患する,失明原因の第一位の眼疾患。緑内障では,網膜の神経節細胞およびその軸索の障害により,視野障害が生じる。
視神経と眼球が繋がる根本の部分には,篩状板と呼ばれる視神経を支える網目状のコラーゲン組織が存在する。緑内障では,この篩状板において視神経が障害を受け,視野の障害が生じると言われてきた。しかしながら,篩状板は眼球の後方に位置することから,実際に生体での測定をすることが困難だった。
近年,光を用いた断層画像化法の研究開発が進み,これまでの2次元水平面だけではなく,断層の撮影が可能なOCTが開発され,臨床の現場で使用されるようになった。今回新たに開発されたスウェプトソースOCTは,生体中の侵達性が向上し,篩状板を非侵襲的に観察することが可能になった。
東北大学のグループは,篩状板の網目状の組織が描出される部位を同定する技術を開発し,OCTにおける篩状板の描出に成功した。その結果,緑内障眼では篩状板が菲薄化していることを明らかにした。更に,視野障害が生じる前段階の極早期緑内障の時期においても,篩状板の菲薄化が認められた。
今回,緑内障の病態である軸索絞扼(こうやく)に関連していると考えられてきた篩状板厚の解明がなされ,緑内障評価の重要な指標となりうる可能性が期待されるとしている。
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