新潟大ら,植物の光の感受性を変える機構を発見

新潟大学の研究グループは日本工業大学とともに,植物の光環境認識に働く光センサ「フォトトロピン」に光感受性の変換をもたらす分子機構が存在することを明らかにした(ニュースリリース)。

植物が胚軸や茎の成長方向を光源方向に向ける光屈性は,生物が示す最も高感度な光環境応答の一つで,極微弱光の光源を認識し,光源へと成長方向を変化させることができる。一方,植物は太陽のような強い光を発する光源も認識して光屈性を示すこともできる。

生物は通常,暗い中では光感受性の高い光センサを用い,明るい環境では光感受性の低い光センサを使い分けることによって光強度の大きく異なる環境を認識している。しかし,同じ光センサが光感受性を変換して異なる光強度の光を認識するというメカニズムはあまり知られていない。研究グループは,植物の光屈性反応に働く光センサ「フォトトロピン1」が極微弱の光から強光まで8桁以上の光強度の異なる光環境で働くことができることに着目し,フォトトロピン1の光感受性のダイナミックレンジ拡張に働く分子機構について研究を行なった。

双子葉植物シロイヌナズナの光屈性が異常になった突然変異体RPT2の光屈性反応を観察した結果,RPT2タンパク質が発現していない暗所ではフォトトロピン1光センサは高感受性を示し,光照射によってRPT2タンパク質が発現するとフォトトロピン1は低感受性に変化することが分かった。RPT2は光によって発現が誘導され,フォトトロピン1光センサに結合することによってその光感受性を下げる。

すなわちフォトトロピン1にとってRPT2はまぶしい光のもとで取り出してつけるサングラスのような働きをする,ということがわかった。また,この研究結果により,「光量と光照射時間によって一次正光屈性と二次正光屈性という異なる光屈性反応が現れるのはなぜか」という植物生理学の古典的問題が解決した。

この成果により,植物の光センサ・フォトトロピンの光感受性調節機構及びその下流の光屈性誘導機構の解明が進むと考えられるという。また,フォトトロピン光感知のコアになるタンパク質ドメインであるLOVドメインが青色光照射によって構造を変化させることから,光で分子機能をオンオフ可能な分子デバイスとして最近動物細胞の研究によく利用されるようになっており,研究グループでは,今回の研究成果がフォトトロピン分子デバイスの新しい利用法の開発につながると期待している。

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