名大,太陽活動の衰退が太陽風の吹き方を変えることを発見

名古屋大学は,太陽地球環境研究所(STE 研)で長期間にわたって取得されている太陽風データを使って太陽風の南北非対称性について解析を行ない,南北非対称性は太陽活動と密接に関連していること,そして最近太陽活動が衰退しているのに伴って南北非対称性が顕著になっていることを発見した(ニュースリリース)。

太陽からは常時高速のプラズマ流「太陽風」が吹き出している。この太陽風の吹き方は,緯度・経度や太陽活動の状態によって大きく異なり,時には北半球と南半球で速度が大きく異なることがある。

研究では,1985年から2013年までの期間に取得されたSTE研の太陽風観測データを使って,太陽風の南北非対称性を調査した。南北非対称性を調べるには,高緯度を含む広い範囲を連続的に観測する必要があり,それは探査機では困難だった。

STE研の太陽風観測は,天体電波源のまたたき現象(惑星間空間シンチレーション IPS)を利用したもので,高緯度を含む広い領域について太陽風速度を精度よく決定できるほか,約30年間のデータが利用が可能。調査の結果,極大期の高緯度において太陽風の分布が南北非対称になること,北極の変化が先行する傾向があること,さらに太陽活動の衰退に伴って大きな南北非対称性が長期間出現していることが判明した。

これらの事実は太陽磁場の南北非対称性と密接に関係しており,特に後者は磁場の双極子成分に対して四重極子成分が優勢になっていることを反映したものと考えられるという。

太陽風全体の構造が太陽活動とともに如何に変化しているかは,観測が困難なため十分な知見が得られていなかった。この情報は銀塊宇宙線の伝搬や地球周辺の宇宙環境(宇宙天気)の変動を理解する上で不可欠であり,さらには銀河宇宙線・宇宙天気への影響を通じて地球気候にまで影響している可能性が指摘されている。

研b九グループは特に,研究で明らかになった太陽活動の衰退に伴う太陽風の変化はマウンダー極小期などの期間にも起こっていたと考えており,今回の成果は太陽活動と地球気候のつながりを解明する上で重要な示唆を与えるものだとしている。

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