富士フイルム,有機溶剤現像リソグラフィで「化学技術賞」を受賞

富士フイルムは,日本化学会の平成26年度各賞表彰において,半導体製造用ネガ型有機溶剤現像リソグラフィープロセス(NTIプロセス)の開発に関する功績で第63回化学技術賞を受賞した(ニュースリリース)。同賞は,日本の化学工業の技術に関して特に顕著な業績のあった者に贈られる。

フォトリソグラフィにおいては,これまで,露光装置光源を短波長化することで回路パターンの微細化が進められてきたが,次世代の微細化を担うと期待されているEUV(Extreme ultraviolet:極端紫外線)露光装置の導入が大幅に遅れており,現在主流のArF露光装置でのさらなる微細化を可能とする新しいパターニングプロセスが望まれていた。

今回の受賞は,ArF露光装置での微細化の限界を超えたNTIプロセスに関するもの。フォトリソグラフィでは,あらかじめパターンが切り抜かれたマスクを通してフォトレジスト膜上にレーザ光を照射する。より微細なパターンを形成するためには,マスクの開口部を狭くする必要があるが,開口部の寸法が露光波長よりも小さくなると十分な光強度が得られず,パターンが形成できないため,従来のポジ型プロセスでは露光光源を短波長化することが求められてきた。

一方,ネガ型プロセスは,マスクの遮光部を小さくすることがパターンの微細化につながるため,光が照射される開口部を大きく設計することができる。しかし,従来のネガ型プロセスでは,現像時にレジスト膜が膨張するため高いパターニング精度が得られず,次世代の微細化には適していなかった。

そこで同社は,レジストではなく現像液の極性を反転することでネガパターンを形成するという逆転の発想で,独自のレジストおよび有機溶剤現像液を開発した。これにより,現像時のレジスト膜の膨潤を大幅に抑制し,パターニング精度を飛躍的に向上させた。

NTIプロセスは,従来のパターニングプロセスでは難しかった20nm世代以降の微細化を可能とした。これにより,次世代の微細化を担う新たな標準プロセスとして,多くの大手半導体メーカが採用を始めている。半導体の微細化は,1チップあたりの製造コストの削減,および,製造された半導体の駆動電力削減において重要であり,スマートデバイスの省エネルギー化にも貢献する。

また,従来のポジ型プロセスでは,現像液として医薬用外毒物であるテトラメチルアンモニウムヒドライド(TMAH)水溶液が使用されていたが,このプロセスではTMAH水溶液を使用しないという点で健康面,安全面での負荷低減にも寄与しており,省エネルギー化への貢献と合わせグリーン・サスティナブルな技術となっている。