鹿児島大学の研究チームは,VERAを用いて大質量星形成領域 IRAS 20143+3634 の水メーザー観測を行ない,年周視差や固有運動を計測した。さらに,太陽系の銀河回転角速度を,より精密に測定することに成功した(ニュースリリース)。
VERAとは,VLBIという電波干渉計の手法を用いて,銀河系内の電波天体の距離と運動をこれまでにない高い精度で計測し,銀河系の3次元立体地図を作るプロジェクト。国立天文台を中心に,多くの大学や研究所からさまざまな分野の研究者が参加し,2003年から観測が始まっている。
IRAS 20143+3634 は,銀河系にある大質量星形成領域で,太陽系と同じ円周上(太陽円)にある天体。太陽系は天の川銀河の中心の周りを回転しているが,IRAS 20143+3634 もほぼ同じ円周上を回っている。
研究チームは2008年12月~2010年12月にかけて,VERAを用いた複数回の観測を行なった。その結果,年周視差は 0.367 ± 0.037 mas,地球からの距離は約 2.72 kpc(=8870光年),固有運動は東西方向が -2.99 ± 0.16 mas,南北方向が -4.37 ± 0.43 mas と算出された。
また,この測定結果をもとに銀河系を回転する運動(角速度)を求めたところ,秒速 27.3 ± 1.6 km/s/kpc と算出された。この値は,国際天文学連合(IAU)でこれまで考えられていた値 25.9 km/s/kpc よりも,約10%大きい(速い)ことが示唆され,最近のVERAなどの観測結果を裏付けるものとなった。
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