原研ら,現場使用が可能な耐熱性を備えたレーザ遮光カーテンを開発

原子力研究開発機構(原研)は,福井県内の繊維企業ウラセと共同で,平成26年度の成果展開事業において,同社が有する機能性付加技術と原研のレーザ光減衰測定技術を組み合わせることにより,耐レーザ光照射と耐熱性を併せ持つ「レーザ遮光カーテン」の開発に成功した(ニュースリリース)。

原研は新型転換炉「ふげん」の廃炉・解体に伴い「原子炉廃止措置研究開発センター」において,原子炉廃止措置に係る研究開発を進めている。廃炉作業では,高出力レーザによって配管の切断等を行なうことを想定しているが,高出力レーザを利用する場合は,レーザの種類に応じて管理区域を設定し,立ち入りを制限するなどの安全対策が義務付けられている。そのため,レーザ光の遮断に優れ,かつ区域を容易に設定できる仕切り素材の開発が求められていた。

既存のレーザ光を遮光するカーテンは,高温の火花や溶融した金属等に対する耐久性を有しておらず,廃炉内の作業には適していなかった。開発グループは今回,火花を受け止めるために溶接の現場などで使用する「スパッタシート」に加工を施すことで,レーザの遮光と耐熱性が両立するカーテンを目指した。

開発したカーテンは,カーテン自体が容易に損傷しないような耐久性を持たせるため,レーザ減衰層にスパッタシートと同等の性能を有する耐熱層と耐炎層を張り合わせた3層構造とした。カーテンの厚みは1.8mm。幅は90cmだが,高さは必要な分を得られるとしている。

クラス4のレーザを用いた試験の結果,レーザ光の強度減衰率は可視光~赤外域において1/100万以下となり,製品として十分な性能を有することを確認した。また,1000℃の耐熱性も確認した。今後は原子炉廃止措置研究開発センターにおいて,実際に使用して性能を確認する予定だ。

幅に制限があるため,カーテン同士を結合する方法など,詰める部分もあるというが,実用化すれば必要な場所でレーザを使用することが可能になり,廃炉作業の能率が大きく向上すると予想される。また,産業用途にも広く利用が期待されるシーンがあると思われる。

開発は,原研敦賀事業本部が進める技術課題解決事業の公募で採択したウラセとの共同開発で平成25年度より進められてきた。平成25年度は素材開発のための基礎試験を行ない,平成26年4月に特許申請を共同で出願している。平成26年度には成果展開事業として採択され,共同開発により今回製品実用化の見通しを得た。