三菱重工,宇宙太陽光発電に向けた無線送電実験に成功

三菱重工業は,将来の実用化が期待されている宇宙太陽光発電システム(Space Solar Power System:SSPS)の中核技術として開発が進んでいる無線送電技術の地上実証試験を実施し,長距離の無線送電に成功した(ニュースリリース)。

具体的には,送電ユニットから10kWの電力をマイクロ波で無線送電し,500m離れた受電ユニット側に設置したLEDライトをその電力の一部を使って点灯させることに成功した。無線送電距離としては500mは国内最長で,10kWも国内最大電力となる。また,ビームが受電ユニット以外の方向へ放射することのないように制御する先進の制御システムの適用試験も実施し,問題のないことを確認した。

この地上実証試験は,経済産業省から一般財団法人 宇宙システム開発利用推進機構(J-spacesystems)が委託を受けた「平成24年度太陽光発電無線送受電技術の研究開発事業」の一環として,一般財団法人 宇宙システム開発利用推進機構との契約に基づき実施したもの。

無線電力伝送技術は,これまでケーブルをつないで電気を送っていたものを,無線化する技術。宇宙太陽光発電システム向けに開発が進んでいるこの無線送電技術は電波放射型といわれるもので,今回の地上実証試験の成功は,地上のさまざまな場面で従来にない長距離の無線送電に道を拓くものといえる。これまで送電線の敷設が困難であった場所への送電や,洋上風力発電から陸上への送電,また身近な応用例としては,電動車両への無線充電といったものが期待されるという。

SSPSは,太陽光パネルを地上から3万6,000kmの宇宙空間に打ち上げ,静止軌道上の太陽電池で発電した電力をマイクロ波/レーザにより地上に無線伝送して,地上において再び電気エネルギーに変換して利用するシステム。クリーンかつ安全で枯渇しないエネルギーであることから,エネルギー問題と地球温暖化問題を解決する将来の基幹エネルギーとして期待を集めている。

同社は今後も,この宇宙開発の先進技術の適用範囲を広げることで社会に貢献していくとともに,将来の宇宙太陽光発電システムの実現へ向けて日本の技術をさらに前進させていくとしている。

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