東工大の研究員の野村龍一氏,SPring-8関連の2つの賞を受賞

東京工業大学 地球生命研究所(ELSI)の野村龍一研究員が,SPring-8に関連する2つの賞「SPRUC 2014 Young Scientist Award」及び「SPring-8萌芽的研究アワード」を受賞した(ニュースリリース)。

「SPRUC 2014 Young Scientist Award」は,SPring-8の利用法や解析手法の開発に顕著な成果を創出した若手研究者,あるいは測定手法や解析手法は確立された方法であったとしても,SPring-8の特徴を活用し測定対象の分野にとって顕著な成果を創出した若手研究者に与えられる賞。

また「SPring-8萌芽的研究アワード」は,将来の放射光科学を担う若手研究者の育成を目的とする「SPring-8萌芽的研究支援ワークショップ」において口頭による成果発表を実施し,選考される賞。「研究テーマの新規性,独創性,発展性」「SPring-8利用結果の有効性」等を基準に審査される。

野村氏は,高圧地球科学の実験的研究を行なってきた。実験では,ダイヤモンドアンビルセルとよばれる直径5センチメートルほどの装置を使って,地球深部の圧力温度に相当する超高圧高温の環境を作り出す。約360万気圧,摂氏5000度の状態を作り出すために,2つのダイヤモンドで試料をはさんで高い圧力を加え,レーザをあてて加熱する。

例えばよく行われている手法として,その上で試料をX線で観測し,結晶構造や体積密度から,その圧力温度状態に相当する地球がどんな様子なのかを予測する。

同氏は地球の歴史,特に原始マントルの化学進化(固化)に注目し,マントル物質に圧力と温度をかけて融かし,従来のX線回折測定に加え,様々な化学分析を行ない,地震波観測から予想されていたマントル深部の化学不均質構造をうまく説明することに成功。この研究成果は2011年Nature誌に掲載された。

また,マントル物質が当初予測されていた温度よりはるかに低い温度で融けはじめることについて,地球の外核(液体コア)の融点低下では,コアに水素原子が入り込むことで実現できると考えた。その水素量は水に換算すると地球の海水の約80倍。大量の水素は,地球形成時に獲得したものと推定される。この研究成果は2014年Science誌に掲載された。

同氏は引き続きマントルやコアを中心に,原始地球の全球的進化について研究を進めている。大学院時代は鉄・マグネシウム・ケイ素といった主要成分で実験を行なったが,隕石に含まれるような微量元素を新たに試料に足して実験を続けている。