国立天文台ら,ラヴジョイ彗星の尾の素早い変化を観測

国立天文台,ニューヨーク州立大学,都留文科大学の研究者からなる研究チームは,ハワイ時間2013年12月4日にすばる望遠鏡でラヴジョイ彗星(C/2013 R1(Lovejoy))を詳しく観測した結果,イオンの尾の構造が,20分ほどの間に大きく変化していたことを発見した(ニュースリリース)。

今回,すばる望遠鏡に搭載された主焦点カメラSuprime-Camを用いて,彗星の核から80万キロメートルほどの範囲のイオンの尾を繰り返し観測し,時間変化を追求した。観測に使われたIバンド(波長850㎚)では水イオン,またVバンド(波長550㎚)では一酸化炭素イオンと水イオンの発する光を見ている。

得られたデータを詳しく調べたところ,ラヴジョイ彗星の尾の大局的な構造が,10分間ほどの短時間で変化していたことがわかった。

さらに,イオンの尾の中を詳しく見たところ,核から30万キロメートルほどの位置に塊が生まれ,秒速20-25キロメートルほどの速度で下流に流れていく様子も発見された。

イオンの尾は,太陽から流れてくる粒子(太陽風)によって彗星の核付近のイオンが吹き流されて伸びていくもので,尾の中のイオンは,最終的には太陽風の速度(秒速およそ 300-700キロメートル)に達して流されていくと考えられている。今回の観測では,彗星の近くにいたイオンの塊が太陽風によって最初の加速を受けつつある,その動き始めの状態を観測したとしている。

今回のイオンの塊の移動速度は他の彗星と比べて遅かった。このようなイオンの塊の初速度がどのような条件で決まっているのか,塊の生成のメカニズムも含めてまだはっきりとはわかっていない。研究グループは今後,様々な条件での彗星の観測データを今後も蓄積していくことで,イオンの尾の中で起きている物理的メカニズムが解明されると期待している。

関連記事「国立天文台ら,フィンレー彗星の急激な増光現の多色同時観測に成功」「九大ら,彗星起源となる塵を南極で発見」「石垣島天文台,ラブジョイ彗星およびボリソフ彗星を撮影