東大ら,貝の化石から5千年前の日射量を3時間毎に推定

東京大学と北海道大学の研究グループは,二次元高分解能二次イオン質量分析計(ナノ・シム)を用いて化石シャコガイの殻に含まれるストロンチウムとカルシウムの比を解析し,5000年前の日射量を抽出することに成功した(ニュースリリース)。

日射量は,気温や降水量などと同様,気候変動に伴って変化する重要な環境要素であるにも関わらず,古い時代についてはほとんど研究が進んでいない。その理由として,日射量と気温が連動して変化するので,地質試料に記録されるこれら2つを分離して抽出することが技術的に困難だったことがある。

一方で東京大学と北海道大学の研究グループは,これまでに,飼育したシャコガイの殻に含まれる微量なストロンチウムとカルシウムの比が日射量の変化と高い相関を示すことを明らかにしている。化石化したシャコガイの殻でもストロンチウムとカルシウムの比を調べることによって,地質試料に記録される日射量と気温を分離して抽出できる可能性があった。

研究グループは,沖縄県石垣島で,世界最大の二枚貝であるオオジャコの化石を採集し,二次元高分解能二次イオン質量分析計(ナノ・シム)を用いて化石シャコガイの殻に含まれるストロンチウムとカルシウムの比を分析した。オオジャコが成長していた時代は,放射性炭素の量から,紀元前3086-2991年と判明した。

オオジャコの成長速度は,年間数ミリメートルに及ぶので,2㎛の空間解像度で殻に含まれる微量な元素を分析すれば,2~3 時間という間隔で推定することができる。研究グループは,シャコガイ殻の切片から,約2年分の記録を抽出し,特に,明瞭な日輪が確認された冬の層のストロンチウム/カルシウム比を,約3時間の高い時間解像度で分析することに成功した。

その結果,このオオジャコが生きていた温暖期である中期完新世には,冬の日射量が現在と同じか,それよりもわずかに高かった(晴天が続いていた)可能性が示唆された。

この成果は,過去の日射量の定量的評価に挑戦した新しい試みであり,今後,気温や降水量などの異なる気象のデータと併せて評価することで,気候変動メカニズムの詳細が明らかになると期待されるとしている。

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