静岡大学工学研究科准教授の香川景一郎氏らの研究グループは,世界最速のフレームレートとなる2億枚/秒を実現するシリコンイメージセンサの開発に成功した。
従来の超高速イメージセンサは,フレームレートをプロセスまたは回路技術のみに頼っていたが,今回開発したシリコンイメージセンサは,光学系・イメージセンサ・信号処理を協調的に利用した新しい概念に基づくカメラアーキテクチャにより,世界最速のフレームレート(時間分解能)を実現した。
今回使用したのは,単一レンズの代わりにレンズアレイを用いた多眼カメラ。通常のシャッタの様に開けて露光して閉めるのではなく,画像を読み出さずに,符号化したシャッタパターンでシャッタを開け閉めして多重露光する。超高速電子シャッタのために,同大川人教授が開発したラテラル電界変調(LEFM:Lateral Electric Field Modulator)画素を利用することで,数億枚毎秒以上のフレームレートを実現した。
具体的には,個眼毎に異なるパターンのランダムな符号化シャッタを与えて画素単位で電荷信号を時間的に圧縮することで,被写体ぶれを起こしたような画像を撮影する。撮影後に撮影の逆過程をコンピュータ上で辿る(逆問題を解く)ことで,超高速の時系列画像を復元する。この時,個眼画像数よりも多い枚数の時系列画像を復元できる(圧縮センシング)。
この技術では,個眼数(=従来法の画像メモリの保存枚数)よりも多くの画像を復元できるため,従来方式よりも高いサンプリング効率を得ることができる。今回,15枚の個眼画像から32枚の時系列画像を復元した。また,フォトダイオードから電荷蓄積部への1段の電荷転送がフレームレートを決めるため,高速化の技術的なボトルネックが少なく,10億枚毎秒以上の撮像速度を近い将来実現できるとしている。
研究グループはこのカメラを用いて,レーザを用いて空気中にプラズマが発生する様子を2億枚/秒で撮影することに成功した。
このカメラの応用分野として,エンジンの高効率化に向けた燃料噴霧・点火過程のモニタリングや,QoL向上のための生体情報の常時モニタリングなどを想定しているという。
関連記事「NHKら,裸眼3D映像に向けた高速読出し撮像デバイスを開発」「東大ら,シャッター速度1/4.37兆秒の超々高速撮影に成功」「静岡大が開発する,超低照度でのカラー動画撮影が実現可能な,小型/高感度/低ノイズのマルチアパーチャカメラ」