芝浦工大,廃棄された電子機器内の金属を効率よく回収する技術を開発

芝浦工業大学は,廃棄された小型機器から金属類を効率よく回収できる技術を開発した(ニュースリリース)。

「都市鉱山」と言われるように,プラズマ・液晶ディスプレイ,ブラウン管,プリント配線板,蛍光管,集積デバイスなどの中には,レアメタル,レアアースを含む再生可能な金属類が多く含まれている。現在,廃棄された機器からそれらを回収するには,金属種ごとに回収過程が分かれており,また高温処理のために大量にエネルギーを消費することや,回収率が低いなどの問題があった。

研究グループは,室温程度の酸の中に破砕した小型機器をまとめて入れて溶解し,電気分解によって各金属を個別に回収する技術を開発した。

具体的には,1.廃棄された電子機器を,ガラス基板,パッケージなどと同時に破砕し,それをフッ化水素酸(HF),フッ化水素酸/過酸化水素水(HF/H2O2)などの溶液の中に入れ,溶解させる。2.溶液槽に電気を流すと,電気分解によって電極に金属が析出し,回収が可能になる。電圧を変えることによって回収したい金属種を特定することもできる。

この技術により,金(Au),銀(Ag),銅(Cu),インジウム(In),鉛(Pb),イットリウム(Y),ガドリニウム(Gd)などが回収できる。

この技術は事前の分別の必要がなく,種類の違う金属を持つ機器をまとめて一つの槽に投入し,電気分解によって個別の金属を回収できるため,解体処理の簡略化が図れるほか,シリカ系ガラスなど金属以外の各種廃棄物も同時処理が可能。また,高温処理をすることなく,室温程度(~40℃)での処理ができるため,省エネルギー化にも寄与する。さらに,廃棄するHFを利用することができれば,リサイクルコスト低減も期待できるとしている。

このように,解体時の事前の分別が不要で,有用金属をまとめて回収してリサイクルに資することができる技術として,金属リサイクル装置を開発中の企業や集積回路・微小電気機械システム(MEMS)分野への展開を考えている企業に有効な技術だとしている。研究グループは今後,企業とともに機器の粉砕から金属回収,廃液回収までを一括で行なえる連続処理装置の開発を目指す。

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