日本フォトニクス協議会(JPC)・関西支部/大阪大学光科学センター主催による特別講演会が2月24日,大阪新阪急ホテル(大阪市北区)で開催された。今回,ノーベル物理学賞を受賞した名古屋大学・教授の天野浩氏を迎えての特別記念講演会で,天野氏の受賞を称えるとともに,シャープ,三菱電機,パナソニックの各社によるGaN光デバイス研究・開発の動向が語られた。
冒頭,JPC関西支部長の中井貞雄氏(大阪大学名誉教授)が挨拶に立ち,「2014年のノーベル物理学賞は青色LEDの研究成果に与えられたが,LEDの社会的インパクトは非常に大きいものがある。LEDは環境・エネルギー分野や,ものづくりの分野,あるいは社会インフラといった全ての面でイノベーションをもたらし,それはさらに広がる可能性がある。また,今年は国際光年だが,「21世紀は光の時代」と言われている。光技術が広く深く産業技術・社会生活に浸透しつつある。この講演会を通じ,今後のビジネス展開につながるヒントが得られることに期待したい」と述べた。
続いて来賓として,近畿経済産業局・局長の関総一郎氏が挨拶に立ち,「今回のノーベル物理学賞受賞には世界の環境・エネルギー問題を解決するうえでも,非常に重要な発明だというメッセージが込められていたと思う。関西には大阪大学をはじめ,機械産業,エレクトロニクス産業,素材産業,化学産業など多くの関連する産業分野が集積している。その中で,JPC関西支部が活動を活発にしていただくことで,ここ関西から新しい光産業が生まれることが期待できる。私どもも,これからの産学連携支援に力を入れて行きたいと考えている」と述べた。
その後,シャープ・執行役員/市場開拓本部長の今矢明彦氏が「新たな光源市場を開拓してきたLED」を,三菱電機・高周波光デバイス製作所・所長の平野嘉仁氏が「GaNデバイスの高周波応用について」を,パナソニックAIS社・常務/技術本部長の久保実氏が「GaNデバイスとその応用」を,大阪大学光科学センター・特任教授の山本和久氏(JPC関西副部長)が「可視光GaN半導体レーザ応用」をテーマにそれぞれ講演を行なった。
このうち,今矢氏はLEDのアプリケーションの方向性として,8Kといった超高精細ディスプレイ向けの開発が活発化することを挙げたほか,LEDは光質の向上と光を操るをアプローチとした製品開発が進むと語った。平野氏はGaNの特性を利用することでレーダや衛星通信,携帯電話基地局,エネルギーなど既存の技術を代替する応用が可能とし,GaN増幅器や発振器の開発の現状を紹介。久保氏はパナソニックが戦略的に進めているのがB to Bであるとしたうえで,GaNレーザ励起光源を応用した照明市場への展開とGaNパワーデバイスの開発動向について解説した。
山本氏は,可視光半導体レーザによる照明・ディスプレイの市場と開発の現状と今後を語り,レーザ搭載製品の市場総額が2030年には54兆円になるとの試算を示した。現在,NEDOプロジェクト「最先端可視光半導体レーザデバイス応用に係る基盤整備」が進められているが,このプロジェクトではRGB3原色の半導体レーザの開発に取り組んでおり,これを実用展開させて新たな市場創出を目指すとしている。
続く特別講演会で天野氏が登壇。ノーベル物理学賞受賞後から授賞式までのノーベルウィークでの出来事を語った後,「Energy Savingを支えるGaN光デバイス」をテーマに自身のGaN系青色LEDの研究の歩みとInGaN-LEDがエネルギー問題解決につながる可能性を示した。
最後に大阪大学光科学センター・センター長/教授の兒玉了裕氏が講演会を総括し,閉会となった。講演会終了後の懇親会は,天野氏のノーベル物理学賞受賞を祝い,終始和やかな雰囲気の中で進められた。締めの挨拶に立ったJPC関西支部事務局長の伊熊敏郎氏は,天野氏がJPC関西の特別顧問就任を検討していることを明らかにした。