宇宙航空研究開発機構(JAXA)と東京大学の研究グループは,2014年12月,東京大学が開発した超小型衛星「ほどよし4号」から348Mb/sの速さでデータを送信し,JAXA宇宙科学研究所の受信設備でデータの誤りなく受信することに成功し,軌道上でその動作を実証した(ニュースリリース)。
これは重量2tの地球観測衛星「だいち2号」の約半分にあたる通信速度であり,2015年2月時点では50kg級衛星として世界最高速となる。
今回研究グループは,衛星搭載用の小型省電力の高速データ送信技術と地上の受信技術について基礎開発をした。そして,超小型衛星「ほどよし4号」の高速通信システムにおけるXバンド通信機の研究開発を行ない,フライトモデルを製作した。
近年,超小型衛星(重量50 kg級衛星)は400-600kmの衛星高度から,地表の数メートルの物体まで見分けられる高解像度で地表を撮影できるようになっている。しかし,超小型衛星の限られた重量や電力に見合うシステムでは地上へ大量の画像データ伝送を行えないことが制約となっていた。
「ほどよし4号」に搭載した高速送信機はアドニクスが製造した。装置重量は1.3 kg。今回用いた通信変調方式は16値の直交振幅変調(16 Quadrature Amplitude Modulation, 16QAM)で,1つのシンボルで4ビットの情報を伝送できる周波数利用効率の極めて高いもの。
正確に伝送するため,研究グループは,アイ電子と協力し,優れた歪特性を持ち高効率な窒化ガリウムを用いた高周波増幅器を開発した。また誤り訂正符号にターボ符号を採用することにより,効率の良いデータの誤り訂正が可能となっている。
衛星に搭載した小型の中利得アンテナはアンテナ技研と茨城大学の協力の下で開発された。衛星からの信号を受信したJAXA宇宙科学研究所屋上の小型アンテナの直径は3.8 mとなっている。
今回の開発研究成果により,超小型衛星による地球観測は,データ伝送の点で大型衛星の機能に迫りつつある。研究グループは今後,1シンボルで6ビットの情報を伝送できる64値の振幅位相変調(64 Amplitude and Phase Shift Keying, 64APSK)を用いた500Mb/sを超える高速通信実験を予定している。
まら,光学センサの性能向上,夜間・悪天候時にも撮影ができるマイクロ波を用いた合成開口レーダ等の搭載観測センサの実現や,衛星システムの信頼性向上も取り組むべき課題だとしている。
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