大日本印刷(DNP)は,高性能な静電容量式タッチパネル用電極フィルムについて,2014年10月ノートパソコンなど中小型ディスプレイ向け製品専用ラインでの量産を開始した(ニュースリリース)。2015年春にはデジタルサイネージ,電子黒板など需要が拡大している大型製品向けに最大85インチまでの量産に対応した供給体制が完了する。
これまで,タッチパネル用電極フィルムの多くにはITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)が導電材料として使用されており,抵抗値を下げられないことや折り曲げに弱いことが課題となっていた。また,銀やアルミなどの抵抗値の低い金属を導電材料としてメッシュ状に形成した電極フィルムもあるが,金属反射によって視認性が低下することが課題だった。
DNPはこれらの課題に対して,従来から開発を進めてきた銅メッシュ方式のタッチパネル用電極フィルムにおいて,専用ラインを立ち上げ,高性能な静電容量式タッチパネル用電極フィルムの量産を可能とした。
量産を開始する製品は,銅を成膜したPETフィルムにエッチング加工を施すことで,メッシュ状のセンサを形成した,折り曲げ可能な静電容量式タッチパネル用電極フィルム。11億円を投資し,中小型向け専用ラインを立ち上げて2014年10月より量産を開始し,現在は40インチサイズまで対応しており,2015年春からは85インチの大型サイズまで対応する。
シート抵抗は0.02Ω/□以下と非常に低く,良好な操作性を実現する。また,新たに開発した線幅2μmの製品は,銅表面に黒化処理を施すことで,フィルムの光の反射率を4分の1以下に減少させ,従来にはないより高い視認性を確保する。
ITOを用いたフィルムセンサは,外周の取り出し配線部分を金属で形成するため2つの製造プロセスが必要だが,銅メッシュ方式では配線部分まで含めた銅による一括形成が可能。そのため生産性が向上し,ITO方式のセンサーと比べて約60%までコストダウンを実現した。
また,フィルムセンサとして一般的なGFFタイプ(カバーガラス+片面ITOフィルム2枚)だけでなく,GF2(カバーガラス+両面ITOフィルム1枚),GF1(カバーガラス+片面ITOフィルム1枚)などの多様な構成にも対応する。GF2およびGF1は電極フィルムが1枚となるためタッチパネルの薄型化に貢献できる。
また,GF2では形成するX電極,Y電極のパターンをフィルム表裏に高精度で位置合わせできるため,モアレも発生しない。このX電極,Y電極を片面に形成するGF1タイプは,ITO方式では抵抗値が高いために採用が困難な中型用途にも対応できる。2015年春に量産予定の大型向けラインでは85インチまでのGFFタイプに対応する予定。
さらに,ITOなどの硬い導電性材料と異なり,割れやキズが発生しにくく折り曲げに強いため,フレキシブル性能が求められるウェアラブルデバイスにも最適。また,ロール状,シート状,チップ状など,顧客のニーズに合わせて多様な形態で提供することができるという。同社では,この静電容量式タッチパネル用電極フィルムで,2015年度に60億円の売上を見込む。