NINSら,プラズマ流れを堰止める新たな機構を分光により発見

自然科学研究機構(NINS)核融合科学研究所と九州大学は,大型ヘリカル装置(LHD)において,磁場で閉じ込められた高温プラズマ(磁場閉じ込めプラズマ)が流れる様子を観測し,プラズマを閉じ込めている磁気面の壊れ(ストキャスティック化)が流れを堰止めることを,世界で初めて観測した(ニュースリリース)。

核融合発電を目指して,磁場で高温高密度のプラズマを閉じ込める研究が世界中で行なわれている。プラズマはその中心温度が上がるにつれて,プラズマ中に乱れが生じる。乱れが発達すると今度はプラズマ中に流れが発生し,乱れと流れが共存する。この乱れと流れの共存は,木星等でも見られる。

磁場閉じ込めプラズマでは,乱れはプラズマをかき混ぜ,中心温度を下げてしまう。一方、流れは,乱れによる渦をすりつぶす働きがあり,中心温度は高くなる。核融合炉ではプラズマ流れを強くすることが極めて重要。また天体では,プラズマ流れの強弱が星の運命に大きく関わっており,プラズマ流れは極めて重要なテーマとなっている。

今回,プラズマの流れを非常に精度よく計測する分光手法を開発することにより,NINSのLHDにおいてプラズマ流れの空間分布を計測した。

LHDでは外部から入射する加熱ビームを制御し磁場のねじれを弱くすると,磁気面が壊れるという現象(磁気面のストキャスティック化)が起こる。この時のプラズマへの影響については1978年に理論予想が提唱されていたが,その予想をはるかに上回る流れの堰止めが起こり,プラズマの流れがほとんど止まってしまう現象を世界で初めて観測した。

流れを堰止める新たな機構(ストキャスティック化)の発見は,今後の核融合研究に大いに貢献するもの。この新たに発見された異常なブレーキ機構は,宇宙天体でも働いている可能性があり,研究グループは今後,更に広い学問的波及効果が期待されるとしている。

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