富士キメラ総研は,食品容器・包装,エレクトロニクス・電子材料,自動車,環境・エネルギー,農業,建材,メディカル・ライフサイエンスなどで幅広く使用されているプラスチックフィルム・シートの市場について調査し,その結果を報告書「2014年 プラスチックフィルム・シートの現状と将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
この調査では,汎用樹脂フィルム18品目,エンプラフィルム16品目,スーパーエンプラフィルム6品目,シート6品目,その他6品目,合計52品目を対象に国内市場および世界市場について調査・分析するとともに,新規用途や注目成長分野の動向,技術開発のトレンドなどをまとめた。
■プラスチックフィルム・シートの国内市場
2014年の市場は,原料高騰による値上げがあり,前年比1.7%増の1兆6,847億円が見込まれる。需要はほぼ横ばいで今後もこの傾向は続くとみる。汎用樹脂フィルム領域は,成長率が低いが,LCDなどのディスプレイに採用される無延伸PVAフィルムやPMMAフィルムの伸びは高いという。特に,PMMAフィルムは,TACフィルムからの置き換えにより偏光板保護フィルムとしての採用が加速するとみている。
■プラスチックフィルム・シートの世界市場
2014年の市場は,前年比3.1%増の4兆4,033億円を見込む。2011年から2013年まで年率5~6%で伸びてきた。今後も拡大が期待され,2018年には4兆9,534億円になると予測する。数量ベースでは2014年に1,093万トンを見込む。
PPフィルムとPETフィルムが8割以上を占める。包材用の汎用フィルムとして世界中で採用されており,需要が多い。今後需要が増加する用途としては,光学フィルム,自動車,太陽電池関連などがある。これらの用途に使われるのはエンプラフィルム領域が中心となっている。
品目別にみると伸びているのは,耐熱透明フィルム。軽量化やフレキシブル化の付与という特徴があり,太陽電池や電子ペーパー,有機ELなどのディスプレイ基板材料として近年採用が拡大している。PMMAフィルムは,偏光板保護フィルムとして拡大が期待されており,韓国メーカの採用を契機に世界でも採用が拡大する見通しだという。
また,PPSフィルムも電気自動車(EV)などの自動車関連の需要にあわせて伸びていくとみている。PLAフィルム・シートは、世界的な環境意識の高まりから好調に拡大している。PLA樹脂に限らずバイオマス由来や生分解性樹脂を使ったフィルムの採用は,コストアップになるが,今後も拡大を予想する。
PVDFフィルムは主に太陽電池用途を中心に,今後も拡大するとみる。太陽電池は中国や台湾メーカの生産が中心となっており,コストダウンが大きく進んでいる。そのためPVDFフィルムは,競合のPVFフィルムやETFEフィルムから,コストを理由にシフトしており,伸びているという。
■PVBフィルムの世界市場
PVBフィルムは,ガラスとの接着性,耐貫通性,透明性に優れていることから,合わせガラスの中間膜として自動車のフロントガラスや,建築用途に採用されている。2014年の市場は前年比1.4%増の1,820億円を見込む。多くの国でフロントガラスへの合わせガラスの搭載が義務付けられていることから,自動車用途が需要の中心となる。中国や東南アジアでの自動車生産が好調であることから,市場も拡大している。
建築用途は欧米での採用が中心だが,すでに普及が進んでいることから微増とした。今後,東南アジアなどの新興国で建築用ガラスの安全基準が見直されることで,合わせガラスの採用が増加するとみられ,市場の押し上げが期待できるという。中間膜以外では,太陽電池封止材としても採用されているが,同用途の中心はEVAフィルムで,さらにPVBフィルムと相性の良かった薄膜太陽電池の生産が低迷したことで需要は減少していとるという。
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