国立天文台,宇宙初期における大量のダストと特異な減光曲線の起源を解明

国立天文台は,クェーサーの母銀河中に密度の高い分子雲が豊富に存在していれば,星間ダスト(星間塵)上への重元素ガスの降着とダストの合体成長が効率的に起こり,宇宙初期で観測された大量のダストの存在と特異な減光曲線を同時に説明できることを明らかにした(ニュースリリース)。

また,このような宇宙初期における炭素質ダストは,グラファイトではなく主に非晶質炭素であることも突き止めた。

これは,星間ダストのサイズ分布を考慮した世界最先端のダスト進化モデルに基づき,高赤方偏移クェーサーのダスト量と減光曲線の進化について調べた成果。

高赤方偏移クェーサーの減光曲線は,近傍の銀河のものと異なることが知られている。また,このようなクェーサーの母銀河中には大量の星間ダストが存在することも確認されている。これらの観測は,宇宙初期において星間ダストが急速に増加し,またそのダストの性質が現在の宇宙のものとは異なっていることを示唆している。

図は,モデル計算によって導かれた1Gyrでの減光曲線(ここでは0.3 μmの減光量で規格化された減光量波長依存性)。点線,太い実線,破線は,クェーサー母銀河中の分子雲の質量割合がそれぞれ 0.5,0.7,0.9として計算した結果,影付きの領域は赤方偏移6.2のクェーサー J1048+4637で観測された減光曲線のレンジを示す。 比較のため,小マゼラン雲の減光曲線も示される(細い実線)。

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