分子研,有機半導体のドーピング効率を100%にすることに成功

分子科学研究所の研究グループは,有機半導体に不純物を極微量加えるドーピングの効率を100%にすることに成功した(ニュースリリース)。

シリコンに代表される無機半導体は,ドーピングによって自由自在にn型化,p型化することができ,その際,加えた不純物の個数に対する発生した電子の個数,すなわち,ドーピング効率は100%であることが知られている。一方,有機半導体のドーピング効率は10%以下でしかなかった。

研究グループは,有機半導体共蒸着膜においてドーピング効率が100%に達することを発見し,この現象を「ドーピング増感効果」と命名した。この発見は,2つの有機半導体が混合された共蒸着膜に対するドーピングを研究するうちに,共蒸着膜ではドーピング効率が単独膜よりも大きくなる傾向に気づいたことによる。

一方,ドーピング増感現象は予想外の発見であり,イオン化率増感を説明する電子移動モデルも,世界で初めての提案となった。これは,有機太陽電池の光電流を高効率で発生させるために,分子科学研究所が1991年に提案した混合接合(バルクヘテロ接合)の,ドーピング版に相当する意味を持つとしている。

ドーピングによるpn制御技術は,半導体デバイスの設計・作製の基本であるため,今回,ドーピング効率100%を達成したことは,長期的に見れば,有機太陽電池のみならず,有機トランジスタ,有機LED等の有機デバイス一般に波及効果がある。

研究グループでは,将来,有機半導体エレクトロニクスという新しい分野・産業を創造できる基本技術になると考えている。

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