東北大学,米国立標準技術研究所,米メリーランド大学,米サンディア国立研究所,およびロシア科学アカデミーらの研究グループは,ナノメートル級の籠状構造(=B10H10イオン)をもつ安定な錯体水素化物において,B10H10イオンによりナトリウム超イオン伝導が促進される新たな現象を発見した(ニュースリリース)。
研究グループでは,水素エネルギーの普及の観点から高密度水素貯蔵材料の開発を進めており,その候補材料のひとつとして,ナトリウム(Na)とホウ素(B),水素(H)で構成される錯体水素化物に関する研究をしている。
その一環で,水素を放出した後に生じるナノメートル級の籠状B10H10イオンと,その周りのナトリウムイオンの動きを丹念に調べた。その結果,Na2B10H10では110℃以上でB10H10イオンの配置変化と高速回転が起こり,これらに促進されてナトリウム超イオン伝導現象が発現することを発見した。
今回の研究成果は,B10H10イオンなどの籠状構造を持つ新たな固体電解質の開発指針を提案し,これを実証した点で注目されており,次世代蓄電池として期待される全固体ナトリウムイオン二次電池の開発を加速させる重要な成果。
今回注目した籠状構造イオンは一般的にBxHy(x, y: 5~12として表され,B10H10とはその大きさに加えて結晶中での配置や回転速度が異なる類似のイオンが他にも多く存在する。Na2B10H10でのナトリウム超イオン伝導現象が明らかとなったことで,新しい固体電解質群としてのこれらの籠状構造を有する錯体水素化物の系統的な研究が望まれる。
研究グループでは今後,ナトリウム超イオン伝導の要因である籠状構造の配置と高速回転を室温でも維持することでイオン伝導特性をより向上させ,Na2B10H10を固体電解質として実装した全固体ナトリウムイオン二次電池の開発に取り組むとしている。
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