名古屋大学と東京大学は,直鎖状のポリエチレングリコール(PEG)が環状の分子であるシクロデキストリン(CD)を貫通した状態を嵩高い分子で閉じ込めた超分子の一種である,ポリロタキサンの環状分子部分に反応性のビニル基を修飾して架橋剤に用いることで,刺激応答性高分子ゲルの力学的物性や応答速度を飛躍的に向上させることに成功した(ニュースリリース)。
高分子ゲルは,高分子鎖が架橋されることで3次元の網目構造を形成し,その空間に沢山の溶媒を保持して膨潤したゲル。高分子ゲルは誰でも簡単に調製できることに加え,分子篩い能,高い液体保持性,振動吸収性などの様々な機能を示すため,多くの分野で実用的に利用されている。
一方,刺激に応じて体積や表面物性を可逆に変化させる高分子ゲルの性質は,この30年間に多くの基礎および応用研究において興味を持たれ,人工筋肉,ドラッグデリバリーシステム,分子認識センサ,再生医療用の培養床など,より高度な分野への利用が検討されてきた。しかし,高分子ゲルの力学物性や刺激応答速度が不十分なため,実用化には至っていない。
研究グループは,開発した架橋剤に用いて刺激応答性高分子ゲルを作ったところ,従来の架橋剤(メチレンビスアクリルアミドなど)を用いて調製した刺激応答性高分子ゲルと比べて,その伸張率が10倍以上になることを見いだした。また,靭性も飛躍的に向上することがわかった。
この架橋剤を用いれば,可動性の架橋点をラジカル重合で得られる様々な高分子ゲルに導入することができるため,従来研究されてきた多くの高分子ゲルの力学物性を向上させることが簡単にできるという。また,刺激応答性高分子ゲルにおいては,その応答速度に関しても飛躍的に向上することが確認されていることから,研究グループでは,人工筋肉,センサ,ドラッグデリバリーシステムといった応用にも利用できるとしている。
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