理研ら,超重元素シーボーギウムの有機金属錯体合成に成功

理化学研究所(理研),日本原子力研究開発機構,独ヘルムホルツ研究所マインツ,独重イオン研究所,独マインツ大学は,106番元素「シーボーギウム(Sg)」の有機金属錯体(カルボニル錯体)の化学合成に成功した(ニュースリリース)。また,その揮発性に関する化学データから,Sgが周期表の第6族元素に特徴的な化学的性質を持つことを実証した。

原子番号103を超える非常に重い元素は超重元素と呼ばれ,重イオン加速器を利用した核融合反応で人工的に合成される。Sgは1974年に発見されて以来,周期表上で第6族元素のタングステン(W)の下に並べられてきた。

しかし,Sgの化学的性質については,化学実験に利用できるSgの同位体265Sgの生成率が1時間に1個程度と極めて低く寿命が10秒程度と短いこと,また,従来の実験手法では265Sg合成時にできる大量の副反応生成物が265Sgの同定を妨害することなどから,ほとんど明らかにされていなかった。

国際共同研究グループは,理研RIビームファクトリー(RIBF)の重イオン線形加速器「RILAC」で得られる重イオンビームを用いて265Sgを合成し,気体充填型反跳分離器「GARIS」を用いて質量分離した後,Sgのカルボニル錯体の化学合成とガスクロマトグラフ法による化学分析を試みた。

その結果,Sgが第6族元素のモリブデン(Mo)やWと同様に揮発性の高いカルボニル錯体を形成し,二酸化ケイ素表面に対する吸着エンタルピーもMoやWのヘキサカルボニル錯体と同程度であることを明らかにした。

さらに,相対論的分子軌道計算との比較から,その錯体がヘキサカルボニル錯体「Sg(CO)6」であることを明らかにし,Sgが第6族元素に特徴的な化学的性質を持つことを高い信頼度で実証した。

研究グループは今後,Sg金属とCO分子の結合の強さを調べるため,Sg(CO)6錯体の熱分解実験を行ない,相対論的分子軌道計算と比較しながら相対論効果が化学結合に与える影響などをさらに検証していく予定。

今回のSg(CO)6合成の成功により,さらに重い107番元素ボーリウム(Bh)や108番元素ハッシウム(Hs)のカルボニル錯体の化学研究も視野に入ってきた。また,GARISによる質量分離とSg(CO)6の気相化学実験を組み合わせ,超低バックグラウンドでの新しいSg同位体の探索や詳細な原子核分光研究の展開も期待できるとしている。

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