アルマ望遠鏡,宇宙に存在が知られている有機分子の異性体を発見

ドイツ・マックスプランク電波天文学研究所が率いる国際研究チームは,アルマ望遠鏡を用いて星間空間に新たな有機分子を検出した(ニュースリリース)。この分子はイソプロピルシアニド(i-C3H7CN)と呼ばれる分子で,既に星間空間に大量に存在することが知られていた分子(プロピルシアニド)の異性体。

プロピルシアニドとイソプロピルシアニドの大きな違いは,この分子の「背骨」にあたる炭素原子の並び方。プロピルシアニドでは炭素が一直線に並んでいるが,今回発見されたイソプロピルシアニドはこの「背骨」が枝分かれしている。今回の発見は,こうした「枝分かれした炭素の背骨」を持つ有機分子が宇宙に豊富に存在していることを示すもの。

今回の観測では,イソプロピルシアニドの存在量はプロピルシアニドの存在量の半分程度であることがわかった。これは,枝分かれした分子が例外的に存在するのではなく,非常にありふれたものであるということを示している可能性を示すもの。

こうした分子は,星間空間に漂う塵(固体微粒子)の表面を覆う薄い氷の層の中かその上で作られると考えられている。星間空間で枝分かれした分子が豊富に作られているということは,タンパク質のもとになるアミノ酸が作られる可能性も高い。枝分かれ構造はアミノ酸に特徴的にみられ,隕石の中から見つかっているアミノ酸にも枝分かれ構造を持っているものが豊富に含まれている。

今回の発見の鍵は,アルマ望遠鏡の高い感度によるもの。他の望遠鏡なら観測に何日もかかってしまうところ,アルマ望遠鏡では数分でこの分子からの微弱な電波をとらえることができた。

国際研究チームは,今回の発見は星間化学や宇宙における物質進化を考える基礎になるものであり,アルマ望遠鏡が天文学の進歩に貢献しているという証だとし,生命の元になるような元素も,生来的にはきっと見つけることができるとしている。

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