東北大ら,絶対零度近くまで世界最速で冷却できる冷凍機を開発

東北大学と日本カンタム・デザインは,室温から絶対零度近くの極低温(0.1 ケルビン,–273℃)まで,世界最速で冷却できる物性測定用冷凍機(ADR,断熱消磁冷凍機)を共同で開発した(ニュースリリース)。通常この極低温を得るためには,希釈冷凍機という高価で大型の冷凍機を使い,数日から一週間程度の長時間を要していた。

今回開発した冷凍機は,クロムミョウバンを冷凍材料として用いて,「磁気熱量効果」により極低温を得る。冷却の手順はまず,米国カンタム・デザイン社製PPMS(物理特性測定システム)を用いて2ケルビンまで磁場中で予備冷却を行なう。その後,ADRを断熱状態で磁場を下げることで0.1ケルビンの極低温を得ることができる。

この方法により,室温から最低温度の0.1ケルビンまで2時間以内に到達することができる。物性測定用の冷凍機としては世界最速であり,これは従来の冷凍機の50~100倍の早さ。従来の冷凍機と比べて,機械的な動作が不要であり原理が単純なため,故障もなく半永久的に使える。

磁気冷凍技術は,環境に優しい次世代冷凍技術として,東芝,中部電力によって室温で動作す冷凍機試作品にも用いられている。研究グループは,低温寒剤であるヘリウム資源の枯渇が叫ばれる中,簡便,安価に極低温を得る冷凍機として今後多くの需要が見込まれており,国内はもとより全世界でこの冷凍機が使用されると共に,極低温を短時間で得られることで,新奇超伝導体の物質開発,磁性材料の開発などにつながると期待している。

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