原研,DNAの曲がりやすさにも遺伝子発現情報が含まれていることを発見

日本原子力研究開発機構(原研)の研究グループは,中性子準弾性散乱実験とコンピュータシミュレーションにより,塩基配列によってDNAの曲がりやすさが異なることを実証するとともに,DNAの二重らせん構造の副溝にある水和水の運動とも密接に関係していることを明らかにした(ニュースリリース)。

これまでの研究では,DNAの曲がりやすさの程度は,塩基配列によって異なることが分かっていた。

今回の研究では,シミュレーション計算で曲がりやすさが大きく異なると予測された二つのDNAに関して,DNAの水和水の運動を直接観測できる中性子準弾性散乱実験をJ-PARCで実施し,その運動の詳細をシミュレーション計算により追跡した結果,DNAの曲がりやすさは塩基配列によって異なることを実証した。

さらに,実験データとシミュレーションデータを統合して解析することによって,①運動の大きいDNAの方が曲がりやすいこと,②DNAの水和水の運動は水素結合の寿命と高い相関を示すことを見出した。つまり,DNAの曲がりやすさはDNA二重らせんの副溝に存在する水和水の水素結合の寿命によって決まるという分子メカニズムを明らかにした。

この成果は,DNA配列には塩基の情報だけではなく,曲がりやすさという情報も含んでいることを実証したもの。今回実証したDNAの情報は,DNA配列から特定の遺伝子を働かせたり抑制したりする仕組みの解明に貢献できると,研究グループは期待している。

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