京都大学と奈良工業高等専門学校らの研究グループは,従来,ケイ素原子を含むシランカップリング剤を用いて,有機溶媒中100度以上の高温で10時間以上反応させなければならなかった,シリカゲルに代表される無機酸化物表面修飾を,合成が容易でしかも精製できる種々のヒドロシラン類と少量の特殊な触媒を用いることで,室温で5分以内に担持量をこれまでの1.5倍から2倍に増大させる簡易かつ高速プロセスを見い出した(ニュースリリース)。
産業界で膨大な量が使用されている従来のアルコキシシランカップリング剤は,反応性,種類,取り扱いの面で問題があり,新規シランカップリング剤と迅速・高効率な新規プロセスの開発が半世紀にわたり待望されてきた。
研究グループは2003年,この課題を部分的に解決できるアリルシランカップリング剤を開発したが,なお反応には高温・長時間を要した。Si-H結合を有するヒドロシラン類は不飽和結合のヒドロシリル化などに広く使われるが,効率の良い表面修飾反応に利用された例はこれまでなかった。
今回,所望の官能基を有するヒドロシラン類を必要に応じて溶媒に溶解して液体状態とし,触媒を加えて反応させた。触媒は種々探索し,特に金属を含まない特殊な触媒が有効であることを見い出した。この触媒を用いると,基材の表面にある水酸基とSi-H基の間で水素を発生する反応が速やかに起こり,基材と修飾官能基の間に共有結合が形成された。
研究グループは少量の触媒存在下,室温,5分間でヒドロシラン誘導体をシリカゲル表面に効率的に担持した。その一例として,クマリンヒドロシランを用いるとUV照射により,鮮やかな蛍光発光が見られた。
この手法は表面水酸基を豊富にもつガラス・セラミックスのみならず,天然および合成繊維・樹脂類の表面にも適用することができ,しかも室温・短時間で反応が進行する。耐熱性の低い基材のみならず,これまで物理的被覆等の非結合形成処理しかできなかった基材表面にも耐久性を付与できる,共有結合形成を伴う表面修飾が可能だとしている。