理研ら,異常量子ホール効果の量子化則の実験的検証に成功

理化学研究所(理研)と,東京大学,東北大学は,物質内部が絶縁体である一方,物質表面だけは金属であるという新物質のトポロジカル絶縁体[(Bi1-xSbx2Te3]薄膜に磁性元素のクロム(Cr)を添加することで,無磁場でエネルギー損失なく電流が流れる「異常量子ホール効果」の量子化則を観測し,異常量子ホール効果と「整数量子ホール効果」が本質的に同じであることを初めて実証した(ニュースリリース)。

共同研究グループは,トポロジカル絶縁体に磁性元素のクロム(Cr)を添加させた磁性トポロジカル絶縁体[Cr0.22(Bi0.2Sb0.81.78Te3]薄膜を基板上に作製した。さらに,試料内部の電子数を連続的に変化させるため,電界効果型トランジスタ構造とした。

そこで,試料内部の電子数を少しずつ変化させながらホール抵抗を測定したところ,ホール抵抗が量子化抵抗値(約25.8kΩ=h/e2)で一定となり,試料が異常量子ホール状態になっていることを確認した。

さらに,制御電圧や温度依存性を詳細に調べ,自発磁化が磁場の代わりとなることで外部磁場なく誘起される,異常量子ホール効果の縦伝導度と横伝導度に関する量子化則が,外部磁場で誘起される整数量子ホール効果と同様の振る舞いを示すことから,両ホール効果が本質的に同じであることを見いだした。

研究グループは今回の成果により,整数量子ホール効果と異常量子ホール効果は本質的に同様の現象であることが示され,整数量子ホール効果の今までの知見を「無磁場」での異常量子ホール効果へ生かすことが可能になるとしている。

具体的には,エッジ電流の物理や関連する素子化技術,制御手法などの活用によって,異常量子ホール状態の素子特性の発展が期待できるという。

また,自発磁化によってエッジ電流を発生できる異常量子ホール効果の実験的検証と,微小磁場でのホール抵抗の符号反転を観測できたことから,今後,エッジ電流を用いた論理回路の構成に向け,制御方法の確立や実現温度の向上などを図ることで,エネルギー消費の少ないエレクトロニクス実現に寄与する可能性があるとしている。

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