北海道大学,京都大学,台湾中央研究院は,台湾のダム湖の調査で,亜硝酸イオンをもとに自ら酸素分子を作り出す能力を持つ脱窒メタン酸化細菌が,最も優占しているメタン酸化細菌であることを確認した(ニュースリリース)。
メタンは強力な温室効果ガスであり,淡水湖沼はその主要な放出源のひとつ。湖沼に生息するメタン酸化細菌は,湖底で生成されたメタンの大半を消費し,大気中への放出を軽減していると考えられている。従来,湖沼メタン酸化細菌群集は主に2つのグループによって構成されるとされてきた。今回の研究ではこれまで知見の無かった亜熱帯湖沼のメタン酸化細菌群集を明らかにするため,台湾のダム湖で調査を実施した。
湖水より収集した微生物からDNAを抽出し,16S rRNA 遺伝子による全バクテリア群集の解析を行なった。その結果,湖沼で通常検出される2グループのメタン酸化細菌に加え,脱窒メタン酸化細菌と呼ばれる別タイプのメタン酸化細菌が検出された。この脱窒メタン酸化細菌は低酸素濃度の深層水から見出され,種レベルでは最も高い頻度で検出されるメタン酸化細菌だった。
脱窒メタン酸化細菌の存在は,メタン酸化酵素遺伝子の解析でも確認された。定量的な解析の結果,脱窒メタン酸化細菌は深層水中の全微生物細胞の16%に達し,最も優占しているメタン酸化細菌であることが確認された。今回の研究により,これまで稀な存在と考えられていた脱窒メタン酸化細菌が微生物群集の主要な構成要素となっている例が初めて示された。
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