名古屋大学の研究チームは,心臓から分泌されるホルモンが慢性腎臓病の進行に保護的な作用を示すことを発見しました(ニュースリリース)。
我が国において慢性腎臓病は年々増加しており,今や国民病の一つ。慢性腎臓病は心疾患の危険因子であり,一方で心疾患が慢性腎臓病を引き起こす,つまり,心臓病と腎臓病はお互いに関連して進行するという「心腎連関」という概念が提唱されているが,その機序は十分には解明されておらず,有効な予防・治療法は見つかっていない。
研究チームは,心臓が産生するFstl1(Follistatin-like 1)というホルモンに着目し,動物モデルにおいてFstl1が腎臓保護効果を有することを明らかにした。
マウスの慢性腎不全モデルにおいて心臓から分泌されるFstl1の産生が増え,血中濃度の増加も認めた。心臓がFstl1を産生しないマウスに慢性腎不全モデルを作製すると対照マウスと比べて,腎臓組織内の炎症反応が悪化し,腎機能の悪化を認めた。
また,マウスの慢性腎不全モデルにおいて,Fstl1を全身投与したところ,腎臓組織内の炎症反応が抑制され,腎機能の改善を認めた。また,Fstl1は腎臓の細胞に直接作用し,炎症反応を抑制していた。
今回の研究の結果より,Fstl1は抗炎症作用を有し,慢性腎障害を抑制する心臓由来のホルモンであることが明らかとなった。Fstl1は「心腎連関」の病態に関与する分子であり,慢性腎不全の予防・治療薬開発の標的になりうると考えられるという。
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