名古屋大学の研究グループは,人体の細胞が,その細胞の種類・性質・状況によって細胞外物質(栄養素など)や細胞表面の膜分子を積極的に内部に取り込む機能「エンドサイトーシス」について,その選択性を制御する新しいしくみを解明した(ニュースリリース)。
細胞が正常に働くためには,これらの栄養素や膜分子を厳密に区別して細胞内に取り込むことが必要と考えられている。これまで取り込みの選別を行なうしくみは一部明らかにされていたが,細胞外物質や膜分子の種類の豊富さを考えると決して十分なものではなかった。
エンドサイトーシスにおいて,細胞膜から膜小胞が分離する際に重要な働きをする dynamin(ダイナミン)分子が知られているが,研究グループはdynamin の新規結合分子 Girdin(ガーディン)を同定し,「dynamin・Girdin・膜分子」の三者間の様々な結合の組み合わせにより,dynamin の活性制御,さらにエンドサイトーシスの選択性が制御されていることを発見した。
過去の研究で Girdin は成体脳の神経芽細胞の移動、様々な悪性腫瘍(がん)の進行,血管新生に重要であることが明らかとなっており,この研究成果は選択的なエンドサイトーシスを司る基本的なしくみの解明にとどまらず,精神神経疾患の発症および悪性腫瘍の進展のしくみの解明にも寄与するものと期待される。