理研ら,超伝導回路を用いたパラメトロンによる量子ビット高精度読出しに成功

理化学研究所(理研),日本電気,東京大学,東京医科歯科大学,米国マサチューセッツの研究グループは,超伝導回路を用いたパラメトロンを作製し,量子ビットの読み出しに応用したところ,90%を超える精度での単一試行読み出しに成功した(ニュースリリース)。これは量子計算機の実現に必須な技術である,量子エラー訂正に必要な「単一試行による高精度読み出し」に応用可能な成果。

パラメトロンは,1950年代に東京大学で開発された計算機の演算素子。フェライトコイルから形成されたパラメトロンを用いた計算機はパラメトロン計算機と呼ばれ,日本で商用化されたが,その後トランジスタの普及に伴い衰退した。しかし,近年トラップ中の冷却原子や微小機械振動子などさまざまな物理系でパラメトロンが実現され,基礎物理だけでなく,新たな計算機への応用の観点からも再び注目を集めている。

研究グループは,磁束計に用いる超伝導磁束量子干渉計(SQUID)を超伝導共振器の回路に組み込んでパラメトロンを作製した。単一のパラメトロンは,位相検波器としての機能を持つが,研究グループはこのパラメトロンを用いて1フェムトワット(10-15ワット)という微弱なデジタル変調シグナルを0.02%という低いビットエラーレート(符号誤り率)で復調できることを示した。

この検波機能を超伝導量子ビットの読み出しに応用したところ,90%を超える高い精度で,高速かつ非破壊の単一試行読み出しを実現した。これは従来の読み出し方法と比較して,読み出しのシグナル強度を小さく保って非破壊性を確保したまま,読み出しのスピードを高速にできるという特徴がある。

この特徴は量子計算機の実現に必須な技術である量子計算のエラー訂正において必要となる「単一試行による高精度読み出し」に利用することが可能となる。また超伝導回路を用いたイジングマシンなど,新しい計算機素子への応用も期待できるとしている。

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