岐阜薬科大学の研究グループは,LEDから発せられるブルーライト(青色光)が目に障害を及ぼすメカニズムを解明した(ニュースリリース)。この論文はNatureのScientific Reportsに掲載された。
ブルーライト(青色光)とは,パソコンやスマートフォンの液晶画面のバックライトとして多く利用されているLEDに多く含まれるとされる可視光の一種。波長が短く目の角膜や水晶体で吸収されないため網膜に達しやすく,視細胞に障害を与えることが知られている。
そのため,眼精疲労や急性網膜障害のほか,加齢黄斑変性症などの眼病の原因としても知られている。しかし,日常の中に広く普及しているLEDに含まれるブルーライトが,視機能に影響を及ぼすメカニズムは十分に解明されていなかった。
研究グループでは,波長の異なる3色のLEDを用い,マウスの視細胞にエネルギーを一定にした青(464nm),白(ピーク波長456nmおよび553nm),緑(522nm)の光を照射し,細胞が受ける影響を調べた。白色LEDは青色光を黄色の蛍光体に介するタイプを使用した。
その結果,青色LEDおよび白色LEDを照射した視細胞において細胞障害が惹起され,緑色 LEDの照射では細胞障害は惹起されなかった。また,細胞障害の原因となる活性酸素の量は,青色LED,白色LEDの順に多く,緑色のLEDでは増加しなかった。
ブルーライトの波長を含むLEDを細胞に照射した際に活性酸素が増加したことによって,細胞のエネルギー産生の場であるミトコンドリアが障害を受け,さらにタンパク質合成の場である小胞体に障害が起きることで,細胞障害が惹き起こされたと考えられるという。
太陽光や液晶モニター機器,LED照明などから発せられるブルーライトから目を守ることや,細胞障害の要因となる活性酸素を抑えることなどが,視機能障害に対する対策の一助となる可能性が示された。この研究は,今後のブルーライト対策に必要な意義深いものだとしている。