筑波大,“光合成しない”光合成細菌のゲノム解読に成功

筑波大学のグループは,ロパロディア科珪藻の細胞内に見られる窒素固定共生体ゲノムの完全解読に成功した(ニュースリリース)。

ロパロディア科の珪藻にはスフェロイドボディ5と呼ばれる特殊な共生体が見られる。スフェロイドボディは光合成を行なうことで知られるバクテリア「シアノバクテリア」を起源とするが,その役割は窒素固定を行ない,宿主である珪藻へ窒素源を供給することであると考えられている。

スフェロイドボディは単独では生存できないことから,珪藻と高度な共生関係を築いていることが示唆されてきた。しかし,その共生関係そのものを対象とした研究はあまり進んでおらず,その詳細はよくわかっていなかった。

今回の研究では,ロパロディア科珪藻の一種 Epithemia turgida(エピテミア・タルジダ)のスフェロイドボディから取り出したDNAを解析し,その全ゲノム配列を決定した。スフェロイドボディゲノムに存在する遺伝子を詳しく解析した結果,スフェロイドボディが独立して生育するために必要な遺伝子はその多くが失われていることが明らかとなり,宿主珪藻に依存した生き方に特化していることがわかった。

失われた遺伝子の中には,光合成に関連する遺伝子も含まれていた。つまり,スフェロイドボディはシアノバクテリアに由来するにも関わらず,光合成能力まで失っていることが明らかとなった。これらの特徴は,スフェロイドボディが珪藻細胞の一部として統合されつつあることを示すもの。

今後,さらに研究が進めば,同じようにバクテリアが共生したことを由来とする,ミトコンドリアや葉緑体といった真核生物の重要なオルガネラの進化に関する手がかりを得られることが期待できるとしている。

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