物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループは,合成粉末試料中から取り出した10μmの極微小な粒子1個の情報からでも新しい蛍光体を開発でき,従来の開発スピードを大幅にアップする新手法を確立した(ニュースリリース)。さらに,この手法を用いた新しい白色LED用蛍光体の開発にも成功した。
白色LEDの応用範囲の広がりに伴い,発光色,発光強度などでさらに高性能の新しい蛍光体が求められている。しかし,これまでの手法を用いた蛍光体開発では,新しく合成した蛍光体の均一な粒子を得ること(単一相化)や,大きな粒子を得ることに多大な労力と時間を必要とするため,開発が極めて困難になっていた。
新しい蛍光体を開発する際には,通常,粉末合成から試行錯誤的に新しい母体物質を開発するが,合成条件の最適化により,新しい蛍光体を単一相に近づける努力が必須となる。しかし,実際の合成では様々な要因により目的物の単一相化には多大な労力,時間を要する。
多くの場合,目的以外の粉末一粒一粒も異なる組成を持っており,こうした残りの微粒子にもまったく新しい蛍光体粒子が含まれている可能性がある。今回確立したのは,従来は分析が不可能だったこうした微粒子1個の情報を用いて新しい蛍光体の開発をおこなう手法。
選び出した微粒子の蛍光体1個は,結晶構造,組成,発光特性を明らかにし,単一組成の粉末の大量合成に展開する。結晶構造解析には大型の単結晶が,量子効率測定には多量の粉末が必要だったが,高輝度のX線源や集光ミラーを用いるなど,装置の改良や独自の装置開発により,蛍光体1個でも測定が可能となった。
「単粒子診断法」と名付けたこの新手法を用いてBa3N2-Si3N4-AlN系から黄色蛍光体Ba5Si11Al7N25:Eu2+と青色蛍光体BaSi4Al3N9:Eu2+を開発した。他の組成系も含めると40個以上の新しい蛍光体を見出した。
今回の手法を用いることで新蛍光体の開発が加速され,蛍光体の性能向上,白色LEDの新用途に向けた展開が進むと期待される。この「単粒子診断法」は蛍光体以外の分野でも展開可能であり,従来の粉末合成では困難となっていた分野での新材料開発が進むと期待される。
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