情報・システム研究機構 国立極地研究所,広島大学,東北大学らの研究チームは,小惑星ベスタ由来と考えられているHED隕石から,シリカ(SiO2)の高圧相,コーサイトとスティショバイトを世界で初めて発見した(ニュースリリース)。
HED隕石とは,隕石の分類であるHowardite隕石,Eucrite隕石,Diogenite隕石の頭文字の総称。地球に落下した隕石が太陽系内のどの天体に由来するのかは隕石の反射スペクトルを測定することである程度推測できる。HED隕石とベスタの反射スペクトルの特徴は似通っており,HED隕石はベスタから飛来した隕石であると考えられている。
NASAの探査機ドーンによる探査でベスタには多数のクレーターが存在することが明らかになっている。これはベスタが激しい天体衝突を経験したことを示唆するものだが,天体衝突時に発生する超高圧力・高温に伴って生成するはずの高圧相がHED隕石からはこれまで発見されていなかった。
研究チームは隕石に含まれるシリカを高分解能の電界放射走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で詳細に観察し,さらにラマン分光法で分光分析を行なったところ,衝撃溶融脈の内部とその近辺でシリカがその高密度相である高圧相,コーサイトとスティショバイトに変化していることを突き止めた。
これまでの研究によれば,約10億年前に起きた天体衝突でベスタに巨大なクレーターが形成され,その際に弾き飛ばされたベスタ表層物質が地球にHED隕石として飛来したと推測されていた。
しかし,シリカの高圧相と放射年代を考慮すると,HED隕石に記録された天体衝突は約41億年前であり,ベスタの巨大クレーターの形成時期とは一致せず,HED隕石の起源と地球への飛来プロセスを再考する必要があることも分かった。
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