山形大学の研究グループは,2種類のインクを用いた印刷により,世界最大面積(約20×20cm)かつ世界最薄(約1㎛)の非常に柔らかいフィルム上に,トランジスタ回路を作成することに成功した(ニュースリリース)。さらに,この回路を手でくしゃくしゃにしても,また,広げても作動することを実証した。
研究グループは,ポリエチレンテレフタレート(PET)シート上に,2種類のインク(半導体インク(有機)と導電性インク(銀ナノ粒子))を用いて印刷で作製することはすでに報告していたが,用いたPETフィルムの湾曲性はせいぜい数ミリ程度で,食品ラップのように柔らかくはなく,人の体や枕,シーツ,衣類などに貼り付けて使用することはできなかった。
今回,ガラス板の支持基板の上に世界最薄のフィルムをまず形成し,印刷したあとで,ガラス支持基盤から剥離させる手法を開発した。さらに,表面平坦化処理,有機半導体のインクと,電気を流す銀ナノ粒子のインクの2種類を用い,インクジェットプリンティング法で線幅5㎛で印刷することで,ハンカチ大で食品ラップよりも薄い電子回路の作製に成功した。また,作製した回路を貼り付けて腕を動かしても,トランジスタの作動信号に変化がないことを実証した。
さらに,曲率半径0.14mmの銅線に巻き付けても正常に動作したほか,柔軟性もあり,約50%に圧縮歪みを印加しても,印加前後のトランジスタ特性は殆ど変らなかった。
これまでのヘルスケアセンサはシリコンの電子回路をベースに作られてきが,柔軟性がなく厚く重いので,人の体に付けると装着の違和感を感じ,人の柔らかい表面に密着しにくい難点があった。そのため,極めて薄く,柔軟に人の体の表面にフィットし,動いても優しく追従できる新しいセンサが求められている。今回の極薄有機集積回路はこのヘルスケアセンサの検出回路,信号処理,制御等への応用に期待できるとしている。