富士フイルムは,ヒトの肌内部における可視光の透過・反射状態を任意の波長ごとに可視化し,赤色光が肌を美しく見せるメカニズムを解明した(ニュースリリース)。また,肌内部での光の状態を解析するため,独自の解析システム「ワンショット可視分光スペクトラルドメイン型(SD型)干渉断層画像解析装置(ワンショット可視分光SD-OCT)」を開発した。
波長の短い青色光は,シミや毛穴などの凹凸を目立たせるのに対し,波長の長い赤色光はそれらを目立ちにくくする性質があることが一般に知られているが,そのメカニズムは解明されていなかった。同社は光の波長によって肌の見え方が異なるのは,肌内部における光の透過・反射状態に起因すると考え,それらを任意の波長ごとに可視化できる解析システム「ワンショット可視分光SD-OCT」を開発し,さまざまな波長の可視光をあてたヒトの肌の断層画像を撮影。波長ごとに光の透過・反射状態を解析した。
その結果,青色光は,肌表面の角質層と,表皮層の浅い領域からしか透過した光が反射してこないため,光を反射する皮膚の領域が薄く,また,反射する光が少ないことが分かった。一方,赤色光は,肌深部の真皮上層まで多くの光が透過するため,光を反射する皮膚の領域が広く,また,多くの光が反射されることが明らかとなった。
つまり,赤色光は多くの反射光が得られるため,肌を内側から照らし出すことができ,肌に透明感を与えることが分かった。これにより,赤色光にはシミや毛穴などの凹凸を目立たせずに,肌を美しくみせる性質があることを確認した。
今回同社が開発した「ワンショット可視分光SD-OCT」は,OCT装置の光源を可視光とし,かつ,任意の波長での測定が可能。さらに独自の光学設計技術の活用により,一瞬で対象物の断層画像が得られる。これにより,可視光の波長ごとに肌内部の光の状態を可視化した断層画像の撮影が可能になった。
具体的には,白色光の中から,カラーフィルタによって任意の波長を選択して測定することを可能にすると共に,複数の波長の光を同時に透過させる多波長同時透過フィルタの開発により,RGBを同時に照射し,同じ箇所のRGB分光断層画像を一度に撮影することができる。
また,OCTの方式はSD型を採用し,複数のシリンドリカルレンズを組み合わせた光学系を設計。光を対象物にライン状に照射・結像させることで,深さ方向/横方向の情報を1回の撮影で瞬時に得ることができ,ヒトの肌のような生体サンプルでも断層画像を撮影することができる。
医療分野などに用いられる一般的なOCT装置は,近赤外光を光源としており,かつ,μmの分解能で精緻なデータを取得することに時間がかかるため,これまで長時間固定が難しいヒトの肌の断面を可視光で撮影することは困難だった。