横市大が開発した,アンビエントイオン化質量分析における世界最小のイオン源が販売開始

横浜市立大学が行なってきた基礎研究の成果を基に,島津製作所と共同で開発し共同で特許出願中の技術が製品化された(プレスリリース)。この製品は世界最小のイオン源を用いることを特徴とするもので,製品化はエーエムアールが行ない,販売も同社から開始された(製品名:「Corona ++」)。

病気の原因になる微量な物質を分析し検出する手法の一つとして,質量分析がある。一般的な質量分析では,研究室内の質量分析装置で試料の分析を行なうが,果物や野菜,衣服表面に付着した有害な化学物質を検出するために,持ち運びが可能で,その現場で高感度な質量分析ができる装置の開発が求められている。

それに対応するために,近年,アンビエントイオン化質量分析(Ambient Ionization Mass Spectrometry)法が開発された。これは,試料分子をレーザやスプレーによってイオン化し,質量分析を行なう方法。近年,利用分野の拡がりや分析対象物質の多様化などに伴って,化合物を感度良く検出したいという要望はますます強まっている。

研究グループは,長年に亘るコロナ放電の基礎研究を応用し,針電極の形状と配置,電極に印加する電圧を調整することにより,アンビエントイオン化質量分析法のイオン化が促進されることを発見した。これにより取扱いが容易かつ高感度なイオン化が可能となり,大幅な高感度化を達成した。

今回発売する「Corona ++」はこれらの研究成果を基に,島津製作所と共同開発し,共同で特許出願中の技術を使用したイオン源。今回,エーエムアールから,既存のアンビエントイオン化質量分析法の高感度化を目的として製品化された。

この装置を用いることにより,例えば,既存のアンビエントイオン化質量分析法であるリアルタイム
直接分析(Direct Analysis in Real Time; DART)法と組み合わせた場合,測定する化合物の検出感度が10倍以上,化合物によっては1000倍ほど向上する。

この製品により,極微量の化学物質を研究室内だけでなく現場で検出することが可能となり,シックハウス症候群や化学物質過敏症の原因となる化学物質,農産物に付着した農薬などの化学物質がその現場で検出できるようになる。