東北大,水で戻せる乾燥ゲル電極を開発

東北大学の研究グループは,乾燥した状態で保存し,水分を吸わせて(水で戻して)使用できる,生体に安全な有機物の電極を開発した(プレスリリース)。

近年,身体に貼り付ける“ウェアラブル”なデバイスによって神経や筋肉の活動をモニタする健康管理システムが話題になっている。また,人工内耳をはじめとする体内埋め込みデバイスの研究も急速に進んでいる。このようなデバイスと生体の電気的な接続を担う「電極」には,貼り付けても煩わしくない柔軟性や,体内に埋め込める安全性などが求められている。

ラップフィルムのような極薄のプラスチックに電気回路が作製できるようになり,その優れた柔軟性が注目されているが,これらは材料としては硬いプラスチックであり,物質の透過性も無い。

一方,こうした電極に人間の身体のように水を主成分とするハイドロゲルを用いれば,肌に馴染み,体内に埋め込んでも組織液の循環を妨げない,理想的な生体親和性の電極が期待できるが,乾燥などによってゲルの体積が変化すると断線するなどの“脆さ”が実用化のネックとなっていた。

今回研究グループは,伸び縮みしても断線しない導電性のウレタンゴムを作製し,これを変形に強いハイドロゲル(ゼリー)の表面に接合する技術を開発した。これにより,乾燥と水戻しで体積が変化しても壊れず,高圧水蒸気による滅菌消毒も可能な,安全・衛生的で「丈夫な」ゲル電極が実現した。具体的には以下の性能を実証している。

①関節などに生じる50%の引っ張り歪を100回加えても断線しない。
②乾燥させて干からびても,水に浸すと5分程度で元の形状まで膨らみ,導電性の劣化も生じない。導電性ウレタンゴムとDNゲルの剥離も起きない。これにより,春雨や干しシイタケの様に乾燥状態で販売・保存することが可能となる。再び乾燥させる事も可能。
③高圧熱水によるオートクレーブ滅菌(120℃,2気圧,20分)ができ,医療分野でも使える。
④細胞に毒性を示さないことを確認。体内への埋め込みも検討できる。
⑤針を使って作成することで,ゲル内部への配線も可能。

このゲル電極は70%以上が水分であるため生体にしっとりと馴染み,神経や筋肉の活動計測,および通電治療などに有効。また,体内埋め込みによる脳・神経機能の補助などにも適している。