北海道大学電子科学研究科・教授の三澤弘明氏の研究グループは,近赤外光を金などの貴金属のナノ構造を用いて高効率に捕集し,エネルギー変換する光アンテナナノ構造体の開発を行なっているが,今回アルミニウムが,近赤外波長域で効率的に光を捕集するナノアンテナとして動作することを明らかにした(ニュースリリース)。
これまで金と銀に比べてアルミニウムは導電性が落ちるため,光と共鳴しても自由電子の運動が妨げられ,局在プラズモンが誘起されてもアルミニウムのナノ微粒子は光を捕捉するためのアンテナとしては高い性能を示さないと考えられていた。
今回,研究グループは作製したアルミニウムナノ構造体のサイズや形状を変化させて透過スペクトルを測定したところ,既報の金や銀のナノ構造と同様に,サイズや形状変化に伴って局在表面プラズモン共鳴の共鳴波長が変化する,つまり色が変化する様子を観測した。
また,この研究では新たにアルミニウムのナノ構造が近赤外波長域において優れた光特性を示すことも明らかにした。この研究成果は近赤外光を有効に閉じ込める光アンテナ構造を安価なアルミニウムを用いても実現できることを示すもので,太陽電池や人工光合成におけるエネルギー変換技術として応用が期待されている。