阪大,直径数㎛の真球形状をした単結晶を作製

大阪大学と大阪府立大学は共同で,超流動ヘリウムという特殊な液体を使い,直径数㎛の真球形状をした単結晶を作製することに成功した(プレスリリース)。単結晶は,例えば直方体や六角柱など,その原子配列を反映した形状をとるのが普通で,光学顕微鏡で見ることのできるミクロンサイズで真球の形状をした単結晶を作ることができたのは世界で初めての成果。

物質に高強度レーザを照射してその表面を破壊あるいは融解させ,原子・分子やそれらの集合体(微粒子等)を作製するレーザアブレーションを超流動ヘリウム中で行ない,様々な材料の真球単結晶化に成功した。

物質が融解して液状になると,表面張力によって真球形状をとる。その真球の周囲を気化したヘリウムガスが取り囲むため,極低温の液体との直接の接触が避けられて急冷が回避される一方で,周囲のガスを媒介して液体からの等方的な圧力を受けながら冷却していくため,結晶特有の形状に変化することが抑制される。この絶妙な条件がミクロンサイズの真球単結晶を作製できる要因であると研究グループはしている。

作製された微粒子のうち,六角柱を示すことで有名なZnOは真球形状となった。これらミクロンサイズのものは光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡で,より小さなものは透過型電子顕微鏡で観察することができる。さらに,作製されたサブミクロンサイズのZnO真球単結晶の透過型電子顕微鏡像では,真球形状を示した上,原子配列に対応する格子縞と呼ばれる構造が観測された。球の表面まで原子の規則正しい配列が続いており,表面が原子スケールで平坦になっている。

さらに,直径2μm程度のZnO真球単結晶を紫外線照射すると,発光を生じた。十数本の鋭い線は真球が光共振器としてはたらいたことによるレーザ発振線に対応し,目で見える最もエネルギーの小さな1.8eV付近から紫外線に相当する3.4eV付近まで,可視光全体をカバーしており,ミクロンサイズの白色レーザとなっている。電子回路に代わり格段に省エネな光回路の利用が検討されている今日,その光源として利用することもできる。

きれいな原子配列がもたらす高い性能と最も対称性の高い形状である球が示す特長を兼ね備えた真球単結晶には,従来材料を超える新たな機能が期待される。例えば,ミクロンサイズの微小球は光を内部に閉じ込める性能が高く,非常に性能の高い光共振器や効率の良い超小型レーザを実現できる。また,光科学に留まらず多方面への応用も考えられるとしている。