東京大学の研究グループは,アブラナ科のシロイヌナズナを用いて,どのような仕組みでさまざまなタンパク質が植物の液胞に運ばれているのかを調べた。その結果,植物には他の生物と共通する液胞への輸送経路に加え,植物が独自にあみ出した輸送経路が少なくとも2つ存在することが分かった(プレスリリース)。
植物の液胞は,動物のリソソームや酵母の液胞と同様に,不要物の分解というはたらきを持っている。このはたらきに加え,植物の液胞はさらに,栄養分となるタンパク質や糖の貯蔵など,動物のリソソームや酵母の液胞にはない,農学的にも重要な多彩な役割を持つ。
この植物の液胞の機能は,液胞ではたらいたり,液胞内に貯蔵されたりするタンパク質が正しく輸送されることにより成り立っている。しかし,植物がさまざまなタンパク質をどのように液胞へと運んでいるのかはこれまでよく分かっていなかった。
今回の成果から,植物は動物よりもはるかに複雑な液胞への輸送経路を進化の過程で開拓することにより,多彩で複雑な液胞の機能を獲得することができたと結論づけた。タンパク質や糖の貯蔵など,ヒトの生活に密接に関わる機能を持つ植物の液胞の機能を最適化・強化することで,高機能植物の開発が期待される。