東大ら,二酸化チタンの光触媒活性を決める因子を発見

東京大学,東京工業大学,上智大学らの研究グループは,光触媒である二酸化チタン(TiO2)結晶の表面における光励起キャリアの振舞いをリアルタイムで観察し,キャリア(電子と正孔)寿命が触媒活性を決定する重要な因子であることを発見した(プレスリリース)。

TiO2にはルチル型とアナターゼ型という原子構造が異なる結晶型が存在し,アナターゼ型の方が高活性だが,両型の触媒活性の差はこれまで未解明だった。

今回の研究により,アナターゼ型の結晶表面でのキャリア寿命がルチル型結晶に比べて10 倍以上も長いことが原因であることを突き止めた。触媒表面の化学処理により光励起キャリアの寿命を制御する手法が,より高性能の光触媒を開発するために有効であることが示唆された。

研究ではTiO2が半導体であることに着目,半導体に特有な現象である表面光起電力をナノ秒スケールで追跡することで,結晶表面の光励起キャリアを捉えることに初めて成功した。

光触媒活性は,光励起キャリアが結晶表面に滞在する時間が長いほど高くなる。今回の研究から得られた結果は,アナターゼ型TiO2がルチル型TiO2より光触媒活性が高いという事実をキャリア寿命の観点から証明する初めての直接証拠。これは目的とする化学反応に応じて最適なキャリア寿命を持つ光触媒を設計できることを示唆しており,触媒設計開発に新たな指針を与えるもの。

この実験は,大型放射光施設SPring-8 の東京大学放射光アウトステーションビームライン「BL07LSU」で,紫外光レーザと軟X 線放射光を組合せた時間分解光電子分光装置を用いて行なわれた。