産業技術総合研究所(産総研)は,ライフ技術研究所(ライフ技研),つくばテクノロジーと共同で,小型軽量な非破壊検査用パルスX線源を開発した(プレスリリース)。
今回開発したX線管は,針葉樹型カーボンナノ構造体を用いた電子源に負の高電圧をかけて電界電子放出現象により電子を引出し,その電子をターゲットに入射させてX線を発生させることで,瞬間的にキロワットオーダーの強いX線を発生できる。
また安定化処理工程で,針葉樹型カーボンナノ構造体の弱い部分を取り除き,電子源としての出力安定性を向上させた。さらに,X線管内部の真空環境を改善して針葉樹型カーボンナノ構造体が破損する頻度を低くした。これにより,2009年には同じ投入電力で100万ショット以上だった寿命は,10倍の1000万ショット以上になった。これは,可搬型非破壊検査用X線源としての一般的な使用条件では10年以上交換せずに使用できる寿命。
今回こうした技術により,管電圧120 kVでは厚さ70 mm以下,重さ2.5 kg以下,管電圧40 kVの場合は厚さ55 mm以下,重さ700 g以下の小型軽量なX線源を実現した。これは,2009年プレス発表時における同じ管電圧のX線源と比べ,体積比が約10分の1となっている。この小型なX線源により,今まで検査が難しかった狭い場所でのX線非破壊検査が可能になった。
さらに,このX線源はミリ秒オーダーのパルスX線を発生できる。パルスX線を利用することで,動くものの瞬時の状態のX線透過写真が撮影できる。また,撮影のタイミングをずらすことで,高速の現象をスローモーションで得ることもできるなど,検査対象物が動いている物であっても瞬時の状況が確認できる。逆に,X線源や検出器の方が移動している場合も撮影できるため,ロボットに搭載して移動させながらパルスX線を用いて高速高精細なイメージを撮影できると考えられるという。