カネカは日東樹脂工業との共同開発を行なってきたが,カネカ独自のポリマー分子設計技術および押出フィルム生産技術により,世界で初めて実用物性を兼ね備えた押出法による「ゼロ・ゼロ複屈折アクリルフィルム」の開発に成功した(プレスリリース)。今後の4K2K・8K4Kへ向かう高精細高画質・低消費電力の各種ディスプレイの実現に寄与するとしている。
液晶ディスプレイでは,「色ムラ・カラーシフト」「高消費電力」の改善のため,光学ポリマーフィルム特有の「複屈折」による画質劣化や光量ダウンの改善が求められている。これに対し,慶應義塾大学より,配向複屈折と光弾性複屈折を同時にゼロとする「ゼロ・ゼロ複屈折ポリマー」の基本原理が提案されていた 。
同社はこの基本原理に基づき,機械物性などの実用物性とゼロ・ゼロ複屈折の性能を両立できるフィルムの生産の実用化に,生産コストが優位な押出法を用いて成功した。
同社は現在試験生産および実用化に向けた検討を実施しており,2014年度末より,現行の生産ラインの一部改造により,年産能力1千万平方メートル規模で量産を開始する予定。更に今後数十億円を投じて,光学フィルム専用のアクリル樹脂生産ラインおよび,フィルム生産ラインの増設を実施,光学アクリルフィルム市場に本格的に参入する。同社はこの用途で2016年に売上高200億円を目指す。
また,今回のフィルムにさらに同社が保有する特殊アクリルゴム技術を付与することで,高靱性なアクリルフィルムの試作にも成功しており,これにより世界最薄となる厚さ20μmの「ゼロ・ゼロ複屈折アクリルフィルム」の製品化にも取り組むとしている。