東北大,デング出血熱において炎症と凝固系の相互作用を示すマーカータンパク質を発見

東北大学災害科学国際研究所教授の服部俊夫氏らのグループは,デングウイルス感染症(デング熱)の急性期において,血中のオステオポンチン濃度が上昇し,症状の回復期では,血液凝固に関与する酵素トロンビンによって切断されたオステオポンチンの血中濃度が上昇することを発見した(プレスリリース)。

これらの新たな知見により,オステオポンチンがデング出血熱において炎症と凝固系の相互作用を示す指標タンパク質(クロストークマーカー)となることが明らかになった。これにより,新たな診断・治療法の開発に貢献することが期待される。

服部教授らは,デング熱及びデング出血熱患者の血漿を用いて,オステオポンチン,切断型オステオポンチン,凝固・線溶マーカーとしての トロンビン – アンチトロンビン III 複合体(thrombin-antithrombin complex: TAT)などを測定した。

重症期の患者の血漿ではこれらのマーカーは上昇し,回復期の患者の血漿ではオステオポンチンと TAT は急減したが,切断型オステオポンチンだけは著明な上昇がみられた。オステオポンチンはフェリチンなどの炎症マーカーと正の相関が見られ,重症期における炎症の指標と成り得ることが分かった。しかし一方で,回復期における切断型オステオポンチンの上昇は凝固系活性化のマーカーである TAT とは逆相関していた。

これは,炎症と同時期に凝固系が活性化され,その結果,切断型オステオポンチンが増加したと考えられる。これらの事実より,免疫の増強作用のあるオステオポンチンが,炎症の場でトロンビンにより切断され,別の炎症分子に結合できる事が知られる切断型オステオポンチンに変換されることが示された。

また回復期に,この切断型オステオポンチンが他の疾患では観察できない程に著増することがわかった。よって,オステオポンチンはデング出血熱において炎症と凝固系の相互作用を示すマーカータンパク質として有用であることが明らかになった。

この発見は,デング出血熱における炎症と凝固の双方が起こる際の動態メカニズムを知る上で重要な所見であり,今後診断・治療への応用が期待されるもの。