産業技術総合研究所(産総研)はシャープと共同で,赤外線カラー暗視撮影用の撮像素子を開発した(プレスリリース)。
今回開発した撮像素子は,産総研が独自に開発した暗闇でもカラー動画が撮影できる技術による撮影映像の高精細化・高フレームレート化ができる新方式の撮像素子。また,単板方式による撮影に適用できるため撮影装置の小型化も可能となる。
さらに,量産による低価格化も可能。撮影装置の小型化や低価格化を進めることで,赤外線カラー暗視撮影技術の適用範囲の拡大や新規アプリケーションの開拓などが期待される。
産総研はこれまで,赤外線照明だけを用いて被写体のカラー動画を得ることができる赤外線カラー暗視撮影技術を開発してきた(①,②)。これは,物体の可視光領域の反射特性と赤外線領域の反射特性の間にある弱い相関関係に基づいて表色処理を行ない,可視光下での被写体の色と同一かそれに近い色によるカラー画像を得る技術。
しかし,これまで試作してきた3CCD方式(3板方式)などの赤外線カラー暗視カメラは,やや大型で汎用の用途には向いていなかった。
今回開発した撮像素子のパッケージの上面サイズは約10 mm × 10 mm。HD720(1280 × 720画素)の高画質で30 fpsの滑らかな赤外線カラー動画を撮影できる。
また,この撮像素子を用いて赤外線カラー暗視カメラを試作した。カメラ本体のサイズが約55 mm × 60 mm × 90 mm,重量が約250 gと小型・軽量であり,持ち運びまたは設置も容易なため,さまざまな用途に応用できる。
産総研では現在,開発した撮像素子の一層の高性能化を進めており,シャープ,ナノルクス研究所により,2014年度中の製品化に向け,より高度化された赤外線カラー暗視カメラや赤外線照射機などを開発している。