京大,眼を動かしても外界がぶれない仕組みを解明

京大は,眼の動きによって生じるブレを補正して,安定した,かつ,連続した視覚認知を得るのに,大脳皮質の後頭・頭頂連合野の一部であるMST野(Medial Superior Temporal Area)の働きが関与していることを明らかにした(プレスリリース)。

私たちは絶えず,非常に速い速度で眼を動かしているが,それにもかかわらず周囲の景色を安定して見ることができる。ブレを補正して精確で安定した視覚情報を得る仕組みがヒトの脳にあるとする指摘は19世紀からあったが,その実態は明らかになっていなかった。研究グループは今回,この眼の動きによるブレを補正して安定した視覚をつくりだす脳内メカニズムを解明するため,サルの大脳高次視覚野から神経活動を記録・解析した。

高次視覚野の神経細胞には受容野があり,それぞれの神経細胞が異なる網膜部位に映る視覚像に反応することが知られている。そこで,眼の動きによって網膜に映った視覚像の位置が移動するとき,神経細胞の受容野の位置にどのような変化が生じるのか調べた。

その結果,大脳皮質の後頭・頭頂連合野の一部であるMST野の神経細胞は,眼の動きが終わった時点で,眼が動き出す前に受容野の中にあった視覚情報を呼び起こし,その瞬間に見えている情報と統合して処理していることが明らかになった。

この実験から,MST野の神経細胞が,眼の動きの前後の情報を統合することで,眼が動くことによって生じる視覚像のブレを補正し,安定かつ連続した視覚認知を維持する神経メカニズムに関与している可能性が示唆された。