原研、処理速度10倍以上、コスト5分の1以下の新しい放射性廃液処理技術を開発

日本原子力研究開発機構(原研)では、簡便で、低コストな新しい 液-液抽出(溶媒抽出)の方法“エマルションフロー法” を利用した、ウラン含有放射性廃液の処理技術の開発に成功した。(ニュースリリース

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人形峠環境技術センターでは、施設設備の解体撤去に伴う除染によってウランを含んだ多量の廃液が発生する。廃液に含まれるウランは、廃液を処理することで放射性スラッジ(汚泥)に移行することから、廃液処理を効率的に進めるとともに、発生する放射性スラッジのウラン量を低減するために、除染廃液から高選択的にウランを除去する必要がある。これまでは、イオン交換樹脂やキレート樹脂などによるウランの除去を検討してきていたが、処理速度や経済性が課題となっていた。

“エマルションフロー法”は、コンパクトでシンプルな装置を使って、簡便、低コスト、かつ迅速に、除染廃液を処理できることが特徴で、原子力基礎工学研究センターで基礎技術を開発した。エマルションフロー法では、水と混じり合わない溶媒(灯油など)を用いることで、水に溶けている成分を液-液抽出(溶媒抽出)によって回収し、水に溶けずに浮遊している微細な固体あるいは高粘性な液体を液-液界面に凝集させて、浮遊物トラップに導くことで回収できる。この方法では、イオン交換樹脂などを用いる従来法よりも格段に迅速に(10倍以上)、かつ低コスト(5分の1以下)で除染廃液を処理できる。

今回、人形峠において実用規模の約半分の規模のエマルションフロー装置を用いて、1時間に60から90リットルの除染廃液を処理した試験によって、除染廃液中のウランを排出基準値のウラン濃度以下まで迅速に除去できること、除染廃液に含まれる浮遊物(固形物)を装置内の浮遊物トラップに集めて同時除去すること、廃液中のウランの92%を選択的に回収することに成功した。また、同じ装置を3段つなげれば、99.9%のウランを回収可能となっている。

エマルションフロー法は、国内のウラン廃液の処理に広く役立つと期待できる。この新技術は、原子力分野以外にも、工場からの排水の浄化や廃液からのレアメタルの回収などに利用できる新技術として、様々な産業分野で注目を集めている。